hirokisakamoto.com
| Main Menu | |||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
|
|
| John Nalan New York / Vol.13 |
|
|
|
| Written by Hiroki Sakamoto | |
| Friday, 27 February 2009 | |
|
John Nalan New York 13「常磐通信・第13号」 香川県人には堪え難い冬のニューヨークとは反対に、夏のニューヨークは最高に快適である。なんといっても湿気がない。さらに蚊もほとんどいない。しかしアメリカ人にとっては大変暑いらしい。エアコンはどこも最強に設定してある。 2003年の夏は確かに例年よりも暑かった。 8月14日の午後4時過ぎ、いつものようにスタジオでせっせとリタッチしていた私と同僚タイラーのコンピューターの電源が突然落ちた。実は2日程前にもブレーカーがとんだので、またかと思っていたけど、配電盤をいじっても電気はつかなかった。 タイラーが「ラジオをつけたほうがいい」とラジカセに電池を入れてニュースを聞く事にした。 「ブラックアウト」らしい。ニューヨーク中が停電になった。 以前から電力の供給が追い付かない状況だというニュースを聞いていたので、さほど驚きはしなかったが、本当に停電になるとは思わなかった。…いや、むしろ街中が停電というマンガぐらいでしかありえない状況に置かれている自分が楽しくてしかたなかった。 まずは外に出た。SOHOで一番広いストリート・ブロードウェイは信号が消え、さらに混雑を増していた。交通手段を失った人々が歩いて帰宅していた。が同時多発テロを経験しているニューヨーカーは的確な判断でパニックになることなく余裕のようであった。 スタジオに戻りしばらくラジオを聞いていたが復帰のメドが立たないと知り、タイラーは早々と帰宅宣言。ブルックリンのアパートまで1時間、歩いて帰ることにしスタジオを去った。 もう一人の同僚アイリーンはとりあえず近くで働いている妹ウェンディーと合流するためにスタジオを出た。アレックスは屋上で昼寝をすると行って消えた。私も帰るべきかと悩んだのだが、家までどう見積もっても歩いて3時間はかかる。ということでスタジオに泊まる事に決めた。 しばらくしてアイリーンがウェンディーを連れてスタジオに帰って来た。そして、みんなで屋上に行き、夕日が沈むのをぼーっと見ていたが、暇過ぎてオモシロくない。ということで夕食を買いに出かけた。しかし重大な問題が発生した。停電したのでクレジットカードが使えない。さらに現金を引き出そうにもATMが動かない。ニューヨーク全体が現金商売になっていたのだ。自分たちの所持金をかき集めてなんとか食料を調達し、屋上で早めの夕食を取る。冷蔵庫に入っていたビールやワインも一気に飲むことにした。 夜になってラジオでニュージャージーまで無料で臨時フェリーを出すことを知ったアイリーンとウェンディーが帰宅を決意した。ウェンディーが同じ服を着て次の日も仕事をしたくないという理由で決断したらしい。バナナ数本と水を2リットル持ってスタジオを後にした。もう夜の8時を過ぎ辺りも暗くなっていた。アレックスも自分のアパートに帰宅し、私だけがスタジオに残った。 しばらくすると向かいのビルの屋上で映画を壁に映写し始めた。ノートブックをプロジェクターに接続しているのだろう。窓際に座って音の聞こえない映画を観た。映画は何故かブラッドピットの「ファイトクラブ」だった。しかし、いいい所でバッテリーが切れて終わってしまった。電気がないと何もできる事はなかった。もはや寝るしかなかった。薄暗いろうそくだけのバスルームでシャワーをして革張りのソファーにタオルをかけてべとつかないようにして寝た。 翌朝6時半に起床。朝の混雑していない時を帰宅時と決断しアイリーンが残していったバナナ2本とスプライトを1缶を持っていざ帰宅。しばらく歩いていると、遠くにバスらしきものを発見。しかし車が通ってないのと信号がないので、バスが動いているかどうかさえ確認できない。がどうやらこっちに向かって動いているらしい。運良くバスに乗れた私は一路 59丁目のクィーンズボロブリッジの入り口まで目指したのである。 23丁目あたりから、昨日帰れなかった人がいっぱいバス停に並んでいた。ミッドタウンは人で溢れかえっていた。私は59丁目で下車し、クイーンズボロブリッジを徒歩で横断するべく橋へ向かった。橋に着くとすでに沢山の人が橋を歩いて渡っていた。いつも車であっという間に渡っていたクイーンズボロブリッジは思いのほか長く、橋を渡りクイーンズまで辿り着いたが、もう家まで歩く体力はなかった。最後は偶然通りかかったタクシーをつかまえ、ポケットに入っている現金で交渉し、家まで送ってもらった。 スタジオを出て2時間半後に帰宅した。 |
|
| Last Updated ( Wednesday, 24 June 2009 ) |
| < Prev | Next > |
|---|


